2011年08月10日
レシピ
引き潮が水平線の向こうに去っていくのは、
見知らぬ海に住んでいる誰かの足元に触れるため。
波は、その人の足元を洗い、
その香りを水に溶かして、また水平線へと戻っていく。
満ち潮がここに帰ってくるのは、
見知らぬ海に住むその人の香りを運ぶため。
いまはまだ異国に生きるその人の吐息を、
波が砂のなかで静かに放つとき、その香りに、人の心はかすかに揺れる。
海がつなぐものは、時に隔てられた運命ではなく、
時が結ぼうとする、運命の約束。
その時を静かに待つことは、 それもまた、約束としての運命のレシピ。
見知らぬ海に住んでいる誰かの足元に触れるため。
波は、その人の足元を洗い、
その香りを水に溶かして、また水平線へと戻っていく。
満ち潮がここに帰ってくるのは、
見知らぬ海に住むその人の香りを運ぶため。
いまはまだ異国に生きるその人の吐息を、
波が砂のなかで静かに放つとき、その香りに、人の心はかすかに揺れる。
海がつなぐものは、時に隔てられた運命ではなく、
時が結ぼうとする、運命の約束。
その時を静かに待つことは、 それもまた、約束としての運命のレシピ。
2011年07月15日
問わず語り
風の足跡は気まぐれ。
だから、その意味を問う言葉は、
小さなこだまとして、風の隙間に消える。
人は卵から産まれ、
石として死んでいく。
空気は光の影として現れ、
水は色彩の香りとして現れ、
光は、愛の熱情として現れるもの。
愛を無くすと、人は光を失う。
けれども、母なる暗闇のなかで、
人は、愛の原始の姿を肌で感じる。
怖れることもなく、崩れることもなく、気負うこともなく、
自然として、毅然として立つことができるように、
人の心は、生きた美で真っすぐに支えられなければならない。
そうすれば、遥かな六つの翼をもつ光が、その青い空の頂から、
人の胸の銀の縄を強く引き上げるから。
人は祈りへの答えを、いつも奇蹟として受け取る。
そして奇蹟は、悲嘆の蕾から咲いた花として、その皇蜜としてあるもの。
だから、その意味を問う言葉は、
小さなこだまとして、風の隙間に消える。
人は卵から産まれ、
石として死んでいく。
空気は光の影として現れ、
水は色彩の香りとして現れ、
光は、愛の熱情として現れるもの。
愛を無くすと、人は光を失う。
けれども、母なる暗闇のなかで、
人は、愛の原始の姿を肌で感じる。
怖れることもなく、崩れることもなく、気負うこともなく、
自然として、毅然として立つことができるように、
人の心は、生きた美で真っすぐに支えられなければならない。
そうすれば、遥かな六つの翼をもつ光が、その青い空の頂から、
人の胸の銀の縄を強く引き上げるから。
人は祈りへの答えを、いつも奇蹟として受け取る。
そして奇蹟は、悲嘆の蕾から咲いた花として、その皇蜜としてあるもの。
2011年06月28日
深い夜の歌
鬼火は揺れて、恋しい恋しい人の元へと走っていく。
その胸の下で眠れるように、焦がれた心を走らせていく。
哀しいかい?
哀しくなんかない。
ただ、思い出しただけさ。
もしも、あの日、ほんの少しだけ、朝が早く明けていたなら、
僕も、この地上に残れたものを。
夜を影の鳥が飛ぶ。
自分と同じ、蒼い闇の空を、糸に乗って泳ぐように。
さあ、施術をしましょう。
その胸の下に眠る、焦げた魂を水に帰すよ。
誰も知らない、透明な深い森の先へと鬼火を帰すよ。
今夜の話は、誰にも言わない。
だから、もう眠ってください。
あなたの夜の一幕は、私が見届けるから。
そして、秘密の話はぜんぶ、古い桜の木箱に入れて、
けして開かないように、鍵をかけておくから。
僕は、語れない語りを運ぶ夜の盗賊だから。
その胸の下で眠れるように、焦がれた心を走らせていく。
哀しいかい?
哀しくなんかない。
ただ、思い出しただけさ。
もしも、あの日、ほんの少しだけ、朝が早く明けていたなら、
僕も、この地上に残れたものを。
夜を影の鳥が飛ぶ。
自分と同じ、蒼い闇の空を、糸に乗って泳ぐように。
さあ、施術をしましょう。
その胸の下に眠る、焦げた魂を水に帰すよ。
誰も知らない、透明な深い森の先へと鬼火を帰すよ。
今夜の話は、誰にも言わない。
だから、もう眠ってください。
あなたの夜の一幕は、私が見届けるから。
そして、秘密の話はぜんぶ、古い桜の木箱に入れて、
けして開かないように、鍵をかけておくから。
僕は、語れない語りを運ぶ夜の盗賊だから。

